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大阪市の住民投票の影響

2020.11.5
不確実な将来に向けて、現状維持か、可能性に挑戦するのか?大阪市民の判断は?
注目しておりました大阪市の住民投票、5年前の2015年についで2度目の否決という結果となりました。
反対69万2,996票(50.63%)、賛成67万5,829(49.37%)で1.2%差、前回の2015年の1万票差から1.7万票差になったものの僅差でした。
大阪市24区の賛成反対票は前回と構図がほぼ同様で、東成区は今回は賛成より反対が多く、それ以外の区は前回同様に反対票が上回り、南北で分断となった結果でした。
反対票が多かった区は、大阪市南部、高齢の住民の比率が高い、税収が比較的少ない区で、住民サービスが下がるという懸念が前回と同じでした。
しかし、前回と変わったのは、変革や変化を求める原動力となりそうな若い世代の賛成の勢いがなく、支持政党の無い無党派層の賛成の勢いが弱まったことが、出口調査では無党派層の4割賛成、6割反対から分かりました。
一方、組織票という点では、前回と大きく変わったのは反対から賛成に変わった公明党の動きです。
山口代表が大阪に入って松井市長、吉村知事と並んで支持を訴え、前回では考えれない2ショットもありましたが、公明党支持者の賛否はほぼ半分半分のニ分されて浸透されなかったとと思います。


2度あることは3度あるのか?とも思いましたが、吉村知事は「大阪市民の判断を政治家として率直に受け止める、僕自身が大阪都構想に挑戦することはない」と語ってました。
府と市の二重行政解消を進めてきた維新ですが、皮肉にもこの10年間、ある程度改革を進めてきたことで投票直前に逆風が吹いたように感じました。
大阪市を無くさなくてもいいのではないか、大阪市が無くなることへの郷愁や不安もあったのではないでしょうか。
今年6月の世論調査では新型コロナ対策で吉村人気もあり賛成が約14%多かったですが、投票直前では反対が増えて拮抗してきました。
維新は良いが、都構想は・・・。
大阪市を廃止してまでやるようなことではないという雰囲気が一気に蔓延しました。5年前も僅差で否決されましたが、この5年間は住民に対する理解が深まらなかったのは都構想が変質してきたような気がします。
当初は成長戦略でしたが、成長戦略より住民サービス充実に比重が変わり、果たして都構想で大阪は成長するのかという疑念になり、そしたら住民サービスが低下するという懸念が再浮上し、都構想の性格そのものがあいまいになってきたこともあると思います。


加えて、住民投票の1週間前の10月26日の毎日新聞の報道の影響もあるでしょう。
市役所の虚偽の誤情報を大阪市財政局の正式発表としてそのまま毎日新聞が報道しました。
毎日新聞に続きNHKも報道し、大阪都構想賛成派に不利な情報があふれました。
結果的にはNHK、朝日新聞は訂正報道をし、大阪市財政局も虚偽情報であったことを認め謝罪をすることになりました。
市役所、新聞社、政党の意図的だとも思ってしまうタイミングでの報道。
しかし、毎日新聞はいまだ訂正もせず、正当性を主張しているようです。
報道の自由はありますが、間違いは認めて謝罪し訂正修正は必要不可欠です。
自律的な是正能力が無い組織の未来は・・・。


そして国政への影響です。
維新にとって、いわゆる「大阪都構想」は一丁目一番地の党の看板政策でした。
維新は今回のことで勢いが失われる可能性があるとの報道があります。
結果、約半数は賛成票であり、住民投票はワンイシューであったので、大阪市民は維新を評価しないとは一概には言えません。
今回は大阪という一地域の住民投票でしたが、菅総理は憲法改正など維新と政策を進めるつもりがあったと推測され、政権運営に多少なりとも影響があるでしょう。
菅総理は松井市長と親しい間柄で、橋下元大阪知事・市長を安倍前首相に紹介したのも菅さんです。
国政では自民党と与党を組む公明党は、住民投票で前回は反対でしたが、今回は賛成の方にまわったことで自民党大阪府連との関係も複雑で、国政と違い大阪ではねじれ現象が起きています。
自民党大阪府連にとっては次の衆議院選挙は追い風ですが、一方では今回反対した自民党、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、この構図がどう影響するのか。
加藤官房長官は影響はない、公明党は住民投票と国政は別物と言っています。
分断した構図の影響がじわじわあるもの、1年以内にある衆議院選挙にどう影響するのか注目していきます。


維新にとっては大きな痛手となった住民投票、松井市長は任期限りで引退表明されました。
今後の大阪の成長戦略の練り直しが必須です。
とはいっても維新は知事、市長のポストを握り、府議会、市議会でも多数派です。
今回は否決となりましたが、ノーサイドの精神で市民の分断を回避し、「府市あわせ」に戻らないための制度設計、府と市が連携した成長戦略、「政令指定都市」のメリットの住民への浸透が求められます。


また、大都市の二重行政や都市の大なり小なりの問題は大阪だけでなく、日本の20の政令指定都市どこでもある問題です。
次回はその点について考えたいと思います。